「さんこうあんにちじょう」は、HP「杉篁庵」(sankouan)の1頁です。
主にその日の庭の花の写真を掲載しています。
 
春日

春日や娘の声を遠く聞く 杉竹
おのが手をひとり見入れる春日かな 杉竹
うち晴れて春日照れるや墓碑銘の影やはらかき文字たどりつる 横雲
春日さし輝き見せる猫の目が萌え草の上おしゃれの用意 やゑ

 

傍題に、「春陽、春日影、春の朝日、春の夕日、春日向」。春の太陽、春の日の光をいう。
「春日」は、春の日光を指すほうが主だが、春の一日を指す場合もある。「春の日」は、うららかな春の一日という意味が主である。しかし、これも春になってようやく力を増してきた日差しのことにも用いる。「春の日」は、のんびりした日中をうたう句の方が多く、春の陽射しそのものを詠んだ句は少数派になる。
俳句では「はるひ」「はるび」と読ませたり、「しゅんじつ」と音読みする場合もある。

 

 うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば 大伴家持
 うち晴て障子も白し春日影 上島鬼貫
 病者の手窓より出でて春日受く 西東三鬼
 去勢の猫と去勢せぬ僧春の日に 金子兜太

 

  「春日閨裏雜詠」 江馬細香
 幾日待春春更遲、生憎驟暖乱芳期。
 百花今歳開無序、梅與杏桃都一時。


  「春日閨裏(けいり)雑詠」
 幾日か春を待つに 春 更に遅く、
 生憎(あやにく)に驟暖 芳期を乱す。
 百花 今歳 開くに序無く、
 梅と杏桃と 都(すべ)て一時なり。

 

 何日も春を待っているけれど、春はひどく遅く、
 困ったことに、急な暖かさがいい季節を乱してしまう。
 今年、花々は開くのに順序というものがなく、
 梅、杏、桃とすべて同時に咲いている。

 

江馬細香(えま さいこう、1787年 - 1861年)は、江戸時代の女性漢詩人、画家。美濃大垣藩の医師江馬蘭斎の長女として生まれる。絵を玉潾・浦上春琴に、漢詩を頼山陽に師事する。頼山陽の愛人であったことでも知られる。

【2017.03.25 Saturday 07:03】 author : 杉篁庵主人
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白花たんぽぽ

雨に冷え白花蒲公英かしこまる 杉竹
黄昏の狭庭に白し鼓草 杉竹
春雨の中に白花蒲公英の孤高に濡れて庭の静けし 横雲
いっぽんの白いたんぽぽ咲いていて春雨の中夢が溶けてく やゑ

 

日本に昔からある在来種のタンポポは花や総苞外片の形状などで地域差異があり、カントウタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポ、シナノタンポポなど、様々な種類がある。その色も「黄色」で当然と思う人が多いのだが、「白花」が普通だという地域もあるという。
「シロバナタンポポ」は、その名の通り花の色が白色〜薄いクリーム色の日本に昔からあるタンポポの一種である。四国や中国地方などを中心に西日本には比較的広く分布しているようだ。
黄色のタンポポは野の花で道の端に見られるが、「シロバナタンポポ」は我が家の周辺ではことさらに育てている他には見られないように思う。

 

タンポポの漢名「蒲公英」と書いてたんぽぽと読ませるが、今では俳句でも「たんぽぽ」と書くことが多くなっている。「蒲英公」として「たんぽぽ、つづみぐさ」の文献もある。
大昔から「たんぽぽ」とか「ふじな」「田菜(たな)」と呼ばれていた草の名の表記として、後に中国から入って来た漢名の蒲公英(ほこうえい)と記し最も一般的な「たんぽぽ」の読みをあてたのだろう。「タンポポ」の和名は、鼓草の名もつけられているようにその花の鼓の形から音を連想して生まれたのかと思われる。


蒲公英()たんぽぽ)の子季語には「たんぽ、鼓草、藤菜、白花たんぽぽ、桃色たんぽぽ、蒲公英の絮、西洋たんぽぽ」があげられている。

「タンポポ」は、キク科タンポポ属の多年草の総称で、世界で何百もの種が確認されているという。
さまざまな種が全国各地の道端や野原に自生し、三月から五月にかけてぎざぎざの葉の間から茎が伸び、その先端に直径四センチほどの花を一個つける。一般は黄色の花で、舌状花と呼ばれる小さな花びらが円盤状に集まって頭花を形成する。頭花は日が照ると開き、日が沈むと閉じる。子房が熟すと花は綿状になり、風に乗った種子は四方に散らばる。それが「絮たんぽぽ」。
外総包片が反り返っているのはセイヨウタンポポである。
昔はたんぽぽは家の周りや道端にも生えていて、めずらしいものでも何でもなく、せいぜい子供の遊び道具や青菜の代用品にしかなれなかったからか、万葉集、古今集はもとより和歌の世界で取り上げられることがほとんどなかった。ようやく詠まれるようになったのは卑俗な題材を積極的に取り上げる俳諧になってからだ。

 

 蒲公英の咲くを笑ふと思ふかな 辻美奈子
 絮たんぽぽ風を孕みて崩れざる 池田博子
 たんぽゝを折ればうつろのひびきかな 久保より江

 

【2017.03.24 Friday 06:17】 author : 杉篁庵主人
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春嵐

春荒れのひと夜あかして萎るかな 杉竹
春嵐呆けを笑へる娘居て 杉竹
汝が胸に咲きたる花の深む色春のあらしのどどむべきかは 横雲
吹きすさぶ春の疾風が散らしたか心に傷の跡残さずに やゑ

 

「春疾風(はるはやて)、春荒れ、春突風、春烈風、春はやち」が「春嵐」と同意の季語。

 

「春のあらし」で連想される漢詩を二つ。

 

  「子夜春歌 」 郭振(郭震)
 陌頭楊柳枝、已被春風吹。
 妾心正斷絶、君懷那得知。
  『全唐詩』では「子夜四時歌六首 春歌二首 其一」

陌頭(はくとう)楊柳の枝、
已(すで)に春風に 吹かれたり。
妾心(せふしん)正に断絶す、
君が懷(おも)ひ那(いかで)か知ることを得ん。
  ・妾心:わたし(女性)の心。女の嘆きを詠んた詩。

 

【大江玄圃(江戸後期の儒学者・漢詩人)の訳詞】
往き返る、ちまたの柳、枝垂れて、春のあらしに吹かるめり、
心乱れしこのうさを、恋しき人の知るべくもがな。

 

「今のわがこころに似たり春嵐 阿部みどり女」

 

  勧酒 于武陵
 勧君金屈巵、満酌不須辞。
 花発多風雨、人生足別離。

酒を勧む
君に勧む金屈巵(きんくっし)、
満酌(まんしゃく)辞するを須(もち)いず。
花発(ひら)いて風雨多し、
人生 別離足る。

 

【井伏鱒二の訳】
コノサカヅキヲウケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトエモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

 

君にこの黄金の杯を勧めよう。
なみなみと注ぐこの酒を遠慮しないでくれ。
花が開けばとかく風雨は多いし、
人生には別れはつきものだ。

 

【2017.03.23 Thursday 09:43】 author : 杉篁庵主人
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春帽子

今日からは新しき道春帽子 杉竹
ふわり飛ぶ旅の男の春帽子 杉竹
遠き日を呼ぶかにかろき春帽子頬触るるまで近づくるもの 横雲
遠くから片手かざして春帽子近づいてくるゆるい坂道 やゑ

 

「夏帽子」は強い日差しを避けるため、「冬帽子」は防寒用と、どちらも生活の中で生きている生活季語になる。この「春帽子」も、本来冬の季語である「ショール」「セーター」「手袋」などが、「春ショール」「春セーター」「春手套」というように、まだ寒さの残る頃の季語として扱われている。
一方春帽子は服飾で春ネクタイが季語にはならないように季語にならないという人がいたりする。
「春日傘」同様に「春帽子」を夏のものに対する季語としている歳時記もある。
冬の帽子とは違って軽やかになり、色も明るくなる春の帽子は、春の到来に心が弾むような心持ちが感じられるから、独立した春の季語にしてもいいと思う。
ただ「秋帽子」は季語に認定されないようだ。「秋扇」ほどには季節感や詩情が感じられないのだろう。

 

 その後は雲に乗りたる春帽子 佐伯克子
 娘と二人弁当開く春帽子 熊谷彰子
 乙女の膝かくして広き春帽子 上野さち子

【2017.03.22 Wednesday 06:36】 author : 杉篁庵主人
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彼岸

お中日人来ては去る良き日なり 杉竹
花束に連れられて行く彼岸婆々 杉竹
大いなる彼岸桜や偲ぶほど艶ます風の光り含めり 横雲
一本の彼岸桜が咲き満ちて君と二人の夢を見ている やゑ

 

「彼岸桜」は、仲春の植物季語。「江戸彼岸」「枝垂彼岸」などの品種名も傍題としてとられている。サクラの野生種の一つで彼岸の頃に他の桜に魁(さきが)けて開花する。
昨日がお中日で隣のお寺にお墓参りをしたが、裏の彼岸桜が満開だった。


彼岸は雑節の一つで、春と秋の2回ある。春分との秋分を彼岸中日(ひがんちゅうにち)として、その前後三日の計七日間が彼岸である。この期間に行う仏事を彼岸会(ひがんえ)という。春分と秋分は、太陽が真東から昇り、真西に沈むので、仏教の西方浄土説と関連づけられたと言われる。西に沈む太陽を拝んで、極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まりという。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、気候がよくなったころ、墓参りをして祖先の霊を供養する。


ただし、俳句で単に「彼岸」といえば、春の彼岸を指し、秋の彼岸は「秋彼岸」と頭に「秋」をつけたり「後の彼岸」としたりする。たまに、「春彼岸」としている句もあるが、これは厳密には季語の使い方としてはよくないといわれる。
春の彼岸の子季語に、「彼岸中日、お中日、彼岸太郎、入り彼岸、さき彼岸、初手彼岸、終ひ彼岸、彼岸ばらい、彼岸前、彼岸過、彼岸講、万灯日」がある。「彼岸詣り、彼岸婆々」をくわえてもいい。

 

 毎年よ彼岸の入に寒いのは 正岡子規
 腰の手のはだか線香や彼岸婆々 河野静雲
 尼寺や彼岸桜は散りやすき 夏目漱石

 

【2017.03.21 Tuesday 06:57】 author : 杉篁庵主人
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花韮

花韮に髭触れつつも猫眠る 杉竹
花韮の星に影さし時揺るる 杉竹
我が庭に星降りしごと咲き敷ける花韮の白薄き紫 横雲
花韮の薄紫は嘘の色逢えなくっても逢いに行こうか やゑ

 

ハナニラ(花韮.)は、 ユリ科トリスタグマ属。原産地は中米から南米。日本では、明治時代に園芸植物(観賞用)に導入され、帰化している。葉は緑色扁平で幅狭く、葉っぱをちぎると名前のとおりニラのにおいがする。この匂いからハナニラの名がある。
野菜のニラは、これとは異なり、ユリ科・ネギ属である。「韮」は春の季語、「韮の花」はこの野菜のニラの花で、こちらは夏の季語である。
花韮は、球根植物であるが、繁殖が旺盛で植えたままにすると庭中に広がる。開花期は春で、花径約3cmの白色の星形6弁の花を花茎の頂上に1つ付け、紫の脈が目立つ。群れて咲くといっぱいの星のようだ。地上部が見られるのは開花期を含め春だけである。
どこにでも咲いている花だか、認知度が低いのか、歳時記になかったりする。今盛んに咲き始めている花だから、春の季語になる。「韮の花」と混乱するので季語に認定されないのだろうか。
「トリテリア」「西洋甘菜」「ユニフローラ」「イフェイオン」の名もある。
英名は春先に星形の花を咲かせることから「Spring star flower(スプリング スター フラワー)」ということからか「ベツレヘムの星」と呼ばれたりもする。
ただ、「ベツレヘムの星」と呼ばれる花には、ほかに大甘菜(オーニソガラム)がある。

 

 花韮の花賞でらるるそよぎかな 宮津昭彦
 花韮のはかなきまでに白き日々 中嶋秀子
 花韮の紫うすき翳りかな 岸 典子

 

【2017.03.20 Monday 06:57】 author : 杉篁庵主人
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白木蓮(はくれん)

白木蓮の散る日差なり村遠し 杉竹
この空はどこまで続く白木蓮 杉竹
白雲に心とまれるはくれんのほぐれむばかり風に濡れけり 横雲
君のいる村に輝く白木蓮さびしい春を歌い続ける やゑ

 

このところ春が加速していい、早春の花から桜の開花に向かって競い合うように花が開く。
昨日、辛夷と似る花として白木蓮(ハクモクレン)に触れたが、俳句では木蓮と言えば柴木蓮を指すのだそうだ。
今盛りなのが白木蓮で、俳句では白木蓮(はくれん)と読む習慣があるようだ。もちろん白蓮(びゃくれん)は字義の通り、白いハスの花でこれとは全く異なる。
昨日も記したが、3月中旬から咲き始め、花の大きさが8〜10センチで、辛夷に似ているが上向きに咲くのがハクモクレン(花びらとガクを含めて9枚)である。コブシ(花びらが6枚)は、花は斜め上や横向きに咲く。山に見られるのは幣辛夷が多く、庭に植えられていたりするのが白木蓮が多いような気がする。
モクレンもコブシもモクレン科モクレン属。
外側が紫で内側が白い柴木蓮は開花が少し遅く、今日みると蕾がまさに膨らんで開かんとしている。雑種のサクラモクレンは淡いピンク。
木蓮には「更紗木蓮」「烏木蓮」という傍題もある。

 

 白木蓮の天のきぬずれ聴こえけり 千代田葛彦
 白木蓮純白という翳りあり 野村登四郎

 


混声のための合唱組曲「時の女神」より
「あなたへ-旅立ちに寄せるメッセージ」作詩・作曲 筒井雅子
冒頭に出てくる白木蓮は作者が10年間勤めていた小学校の門にあったという。白木蓮が卒業期の花というとらえ方には新しい感触がある。

 

【2017.03.19 Sunday 06:34】 author : 杉篁庵主人
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辛夷(こぶし)

辛夷咲く墓地入口に佇めり   杉竹
杖ついて辛夷の下に居るふたり   杉竹
遠望の田打ち桜はけぶるごと君来ぬ里にぬくき陽の射す   横雲
また逢える溢れるほどに咲いている辛夷の花が知っていること   やゑ

 

辛夷は仲春の季語。
傍題に「木筆、山木蘭、幣辛夷、やまあららぎ、こぶしはじかみ、田打桜」がある。モクレン科の落葉高木の日本固有の花木で、山野に自生し観賞用に栽植される。
早春、葉が出る前に六弁の白い花を枝先につける。莟の形が赤ちゃんのにぎりこぶしを連想させるのでこぶしと名付けられた。
白木蓮に似た花だがそれよりやや小さくつつましい。


幣辛夷(シデコブシ)はあまり大きくならない辛夷で、あたかも紙を一定の形に切って玉串や注連(しめ)の先に垂らした幣(しで)のようだというところから命名されている。シデは『垂らす』意を表す古語シヅという動詞の名詞形だそうである。

 

桜とともに野山を白い花で彩るコブシは春の訪れを知らせる花木である。
ヤマザクラとともにコブシも種蒔きや田植えの時期を知らせる花木として古くから農耕と密接な関係があり、そのため両種とも「田打ち桜、種蒔き桜、田植え桜」と呼ばれる春の来たことを示す花木であった。


コブシは、同じモクレンの仲間で庭木としても栽培されるハクモクレンよりも花が小さく、開花時に花のすぐ下に小さな葉が生えているので簡単に区別することができる。モクレンには葉はなく、花が終わってから葉が生えてくる。

 

   さほ姫の御目の上のこぶしかな   一茶
   君が門こぶし花さくうす月夜   中勘助
   山垣の雲ひらきつつ辛夷かな   飴山實
   来世とはまぶしきことば花こぶし   柴田白葉女

【2017.03.18 Saturday 07:08】 author : 杉篁庵主人
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喇叭水仙

重たげに喇叭水仙倒れたり   杉竹
歓びの歌声揃うふ黄水仙   杉竹
咲き競ひ春を歓ぶ黄水仙遥けき想ひ陽射しに揺るる   横雲
陽を受けて喇叭水仙揺れている私の想い呟くように   やゑ

 

「喇叭水仙(らっぱすいせん)」は春の季語。
ヨーロッパ原産のスイセンの1種、ヒガンバナ科スイセン属のひとつで、花は黄色または白、花期は三月から四月にかけて。副花冠がラッパ状(長い筒状)になるのでこの名がある。

 

普通、水仙あるいは水仙花、野水仙と言われる「日本水仙」は十一月から三月にかけて、寒風吹き荒ぶ海岸の急斜面に群がり咲く景色が印象的な、昔から清楚な美しさと淡い芳香が好まれ、庭に植えられたり、正月の花として飾られたり愛好される。寒中に咲く花として印象的なことから冬の季語とされている。内陸部ではやや遅れて開花するがいづれにせよ冬の花で雪の中に咲くイメージか「雪中花」と呼ばれる。

 

これに対して、花びらの黄色い「黄水仙」や花の中心の副花冠に赤い縁取りがある「口紅水仙(早生口紅)」とともに「喇叭水仙(ダッフォディル)」は遅咲きゆえに春の季語となる。俳句では春に咲く水仙を春の季語として詠むには「◯◯水仙」とその名で詠むしかない。日本古来の水仙より派手で、清純可憐というより春の歓びを溢れさせている感がある。「桃色水仙」も春。
水仙の名の付くアヤメ科イキシア属の「檜水仙(イキシア)」は、晩春から初夏の花で、花色は白、黄、赤、ピンク、薄紫などさまざまだが、これも春の季語になるのだろう。


しかし、「檜扇水仙(ワトソニア)」「姫檜扇水仙(モントブレチア)」は、夏の花である。夏の花らしく夏の季語に相応しいのだが季語集には入っていない。

 

   喇叭水仙のぞくものではありません   川端展宏
   喇叭秘め喇叭水仙莟めるよ   高澤良一
   三鬼の墓水仙喇叭純黄なり   立岩利夫
   両隣喇叭水仙咲き揃ふ   熊倉猷

【2017.03.17 Friday 07:26】 author : 杉篁庵主人
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クリスマスローズ

俯けるクリスマスローズ色かすか 杉竹
風ぬくしクリスマスローズ咲き揃ふ杉竹 
俯ける八手花笠影濃くす我身ひとつといざよふ月に 横雲
クリスマスローズを月が照らしてる見る人影が来ない夜にも やゑ

 

クリスマスローズは、植物学上の属名はヘレボルスで、日本には明治の初め頃、薬草として渡来し、その後、茶人などが細々と育て、茶花として「初雪おこし」「寒芍薬」と呼び、親しんでいたという。和名では「八手花笠」とも呼ぶ。もともとはヘレボルス属の一種類のニゲルという種で一重の白い清楚な花で、イギリスやドイツでは、クリスマスの頃の12月に咲き、クリスマスに咲くバラとして、「クリスマスローズ」という名前がついているのだという。歳時記でもその名にひかれて冬にしているものが多いのだが、現在出回っているクリスマスローズはヘレボルス属全体を呼んでいて、その多くの品種は、クリスマスのころではなく、春に開花する春の花である。
そうなるとこの名で句を詠むのが難しくなる。

 

実際は今咲いている「ヘレボルス」を「クリスマスローズ」と捉えると、これは、一重から八重、セミダブル、ダブルなど、色も白・薄い黄・緑がかった黄・紫とその花の姿が豊富な春の花となる。春とクリスマスの取り合わせがこの花に夢を見させる。生活感覚としては春を迎えて咲く花のイメージに合わせて春の季語にしたい花である。
今、庭に咲いているのも、白とか紫や花びらの縁が淡い紫とかさまざま。色は見てわかるが、皆俯いて咲いているので首を起こして覗かないと花の中にまた花がついているかどうかなどははわからない。

 

 通るたびクリスマスローズの首起こす 田口素子
 クリスマスローズ気難しくて優しくて 後藤比奈夫
 クリスマスローズ心に街に出し 中村汀女

【2017.03.16 Thursday 06:41】 author : 杉篁庵主人
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