「さんこうあんにちじょう」は、HP「杉篁庵」(sankouan)の1頁です。
主にその日の庭の花の写真を掲載しています。
 
爽籟(そうらい)

ゆるらかに包む爽籟旅の道 杉竹
爽籟に聞き入る林碑一基 杉竹
君来ねばおとなふ秋の風の香を辛さまさりて恋つつぞ聴く 横雲
爽やかな風にあなたの面影を追って彷徨う薄野の秋 やゑ

 

「爽籟」は、秋風のさわやかな音、音の響きのことを表す。「秋の風・秋風」の別名である。「爽やか」だけでも秋の季語で、「籟」は「風の音・笛」の意。松籟の頼と同様。
「金風(きんぷう)」「色なき風」「白風」もやはり「秋の風」である。

 

 爽籟に大安達野をかへりみる 富安風生
 みまかりしとき爽籟のたしかなり 鷲谷七菜子
 爽籟や峡二十戸の野良日和 佐藤古城
 爽籟に肌みがかれし岳樺 大川輝子

 

【2017.08.23 Wednesday 05:54】 author : 杉篁庵主人
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柘榴

夜の闇に熟れたる柘榴浮かび出づ 杉竹
占ひて恐れ入り谷に割れ柘榴 杉竹
つぶつぶの柘榴の色を潰しつつ瞼閉づれば君の影さす 横雲
捥ぎ取れば熟れた石榴で手が濡れて少年の日が甦る朝 やゑ

 

今日の句会の兼題でもある柘榴(石榴)は、秋に結実する。ごつごつした硬い果皮を割れば、濃紅のみずみずしい小さな実が宝石のように詰まっている。鑑賞用、食用、薬用に利用される。甘酸っぱく、ほのかな苦みがある。
今頃は色づいているが、熟れて割れるほどになるのは早くても9月末からだろう。
天女のような姿で子供を抱き、右手には吉祥果として柘榴を持っている像として描かれるのが鬼子母神である。

 

 口あけて柘榴のたるゝ軒端哉 正岡子規
 実柘榴の涙の粒に似しを食む 馬場移公子
 石榴裂けレンブラントの夜の暗さ 須川洋子
 一筋の月の光に石榴裂け 新野 祐子

 

【2017.08.22 Tuesday 05:59】 author : 杉篁庵主人
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秋の初風

田の原の秋の初風実の香り 杉竹
初風のすりぬけてでるくさめかな 杉竹
さらでだに身にしむ秋の初風やいかなる色になれはそむらむ 横雲
ぞろぞろ行く河原の秋の初風に遠く遠くの面影が湧く やゑ

 

「秋の初風」は、古今集に「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行)」と詠まれる秋の到来を思わせる風である。
秋に吹く風は蕭条として物寂しい感じがあるが、「初風」はまだ夏の名残が消えないものの、明らかに風に秋の風
情を感じる場合をいう。「初秋風・秋初風・初風」とも。
なお、「初風」はその季節の初めに吹く風で、特に初秋の風をいうが、「春の初風(元日に吹く風)」を詠うことも多い。

 

宮城道雄の箏曲に「秋の初風(作詞は石橋令邑)」があり、平家物語の「祇王が事」を歌っていて、「萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草いづれか秋にあ はで果つべき」と、祇王が詠んだ一首の引用の後「秋の初風ふきぬれば星合の空眺めつゝ天の戸渡る梶(かぢ)の葉に燈(ともしび)かすかかきたつる庵の編戸をうち叩くきみはさんげもさめざめと一つ蓮(はちす)の身となりぬ。」と語られる。

 

 初風や回り灯籠の人いそぐ 几董
 白川や秋の初風旅の歌 正岡子規
 こんな日はひとりがよろし秋初風 高澤良一
 文机に初秋風を招きけり 阿波野青畝

 

 初風の眉に男の決意あり 加古宗也(これは「春の初風」)

【2017.08.21 Monday 07:22】 author : 杉篁庵主人
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秋蝉(しうせん・あきぜみ) 

秋蝉のなほ盛んなる昼餉後 杉竹
明日なきと途切れし会話秋の蝉 杉竹
雨止まず一声高き秋蝉のねのみ哀しも世はむなしきと 横雲
落蝉を濡らして秋の雨止まず貴女のいない朝がむなしい やゑ

 

単に蝉といえば夏の季題。立秋を過ぎて鳴く蝉が「秋蝉」「秋の蝉」。盂蘭盆の頃の蝉の鳴き声にはまだまだ力強いものがある。夕方になると、クマゼミ・油蝉やミンミンなどに混じってかなかな(蜩・ひぐらし)やつくつく法師も鳴き始める。
雨と涼しさで蝉も出る時期を違えそう。雨止みを待てず小降りになるとないている。

 

 秋蝉ややがておのれも一基の墓 鈴木真砂女
 秋の蝉たかきに鳴きて愁ひあり 柴田白葉女
 秋蝉のこゑ澄み透り幾山河 加藤楸邨
 鳴きざまの朝からなげやり秋の蝉 高澤良一

 

【2017.08.20 Sunday 06:32】 author : 杉篁庵主人
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落蝉

落蝉を拾ひて朝の散歩道 杉竹
落蝉の動きも止みて日の暮るる 杉竹
たのまれぬ心に辛き落ち蝉や恋もうらみもねのみなかるる 横雲
動けずにジィと鳴いてる落蝉の恨みの声を手に玩ぶ やゑ

 

気温が下がりすぎているのか朝には蝉の声がきこえず、7時半過ぎに鳴き始める。
落蝉は、寿命を終えて地面に落ちた蝉。死蝉。
仰向けに落ちていて、死んでいるかと思うと、ジージー叫びながら激しくもがいたりする場合があったりする。
落蝉は、蝉の傍題として、また夏にもよくみかけるので夏においている歳時記が多いが、短い夏の終わりの象徴として、秋の季語として詠まれる場合も多いように思われる。

 

 落蟬にまだ飛ぶ命残りをり 甲斐羊子
 落蝉の蟻乗せしまま歩き出す 篠田重好
 落蝉を拾へばこゑをあげにけり白井 爽風
 落蝉のやっと静かに我もしずか 池田澄子

【2017.08.19 Saturday 05:57】 author : 杉篁庵主人
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秋黴雨(あきついり)

淋しさや蕎麦の冷たき秋黴雨 杉竹
秋黴雨身をそぼちつつ蝉啼けり 杉竹
ふるかひのなくもつれなき秋黴雨あだなる色に濡れてうつれり 横雲
送る日も止まない秋の長雨があなたの影をつつんでしまう やゑ

 

このところ涼しい雨が続く。
8月後半頃から10月頃にかけて梅雨のように長く降る秋の雨、また,その季節に入ることを「秋黴雨(あきついり)」という。
秋雨前線による「秋の長雨」で、春の雨にくらべて寂しい風情もある。「秋雨」「秋湿り」「秋霖(しゅうりん)」「すすき梅雨」という言葉も同義。

雨の多い日本では一年中長雨はあるので、冬から春にかけての「菜種梅雨」、春から夏にかけての「梅雨」、夏から秋にかけての「すすき梅雨」、秋から冬にかけての「山茶花梅雨」と季節ごとの言葉がある。

「黴雨」はふつう「ばいう・つゆ」と読む梅雨の別称である。中国では「黴(カビ)」の生えやすい時期の雨として黴雨と呼ばれていた。「あきついり」は「秋入梅」とも書く。「ついり」は「つゆいり」の転。

 

 はてもなく瀬のなる音や秋黴雨 中村史邦
 かんざしで封切る手紙秋の雨 水谷八重子
 改札に切符を探す秋黴雨 松沢佐多子
 秋黴雨蝋燭の火がしんと立つ 中山純子

 

【2017.08.18 Friday 07:25】 author : 杉篁庵主人
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空蝉

掴めるや空蝉の身を透ける夢 杉竹
空蝉の世に出づる力残せり 杉竹
うつうつとむなしきからに空蝉の我が身辛しとねこそなかるれ 横雲
声高く啼いてる蝉は殻捨てて辛い時代を忘れてるのか  やゑ

 

空蝉とは蝉の幼虫が脱皮したぬけ殻。「うつせみ」は、もともと「現し身」「現せ身」で、生身の人間をさしたが、のちに、「空せ身」空しいこの身、魂のぬけ殻という反対の意味に転じた。これが、蝉のぬけ殻のイメージと重なって歌に詠まれた。晩夏の季語。透明な脱け殻がいつまでも木の幹をつかんでいたり草陰に転がっていたりする。

 

 空蝉のふんばつて居て壊はれけり 前田普羅
 空蝉となるべく脚を定めけり 夏井いつき
 ずぶ濡れの空蝉一つ見つけけり 高澤良一
 蝉の殻拾ふも捨つもふたつ指 佐藤鬼房

【2017.08.17 Thursday 05:56】 author : 杉篁庵主人
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朝顔

朝顔のみな萎れけり門送り 杉竹
朝顔に思ひ託すや星の恋 杉竹
朝な朝なさやかに咲ける朝な草身を尽くしてやまたたちかへる 横雲
朝毎に咲く朝顔がいとしくて今朝もあなたを思い出してる やゑ

 

朝顔は、入谷の朝顔市が毎年7月上旬に開かれるせいか夏の季語だと勘違いされるが、これは特別早く咲くように仕立てたもので、本来、朝顔は、秋の訪れを告げる花とされる。夜明けに開いて昼にはしぼむ。日本人はこの花に秋の訪れを感じてきた。
つまり、季語としては、「朝顔市」は夏の季語だが、「朝顔」は秋の季語になる。
朝顔は熱帯アジア原産の一年草で、日本には奈良時代末期に唐あるいは百済から持込まれた。江戸時代には観賞用として栽培されるようになった。
江戸時代の俳句には「蕣」と書いて「あさがほ」と読ませる例がある。旧暦七月(新暦では八月下旬)の七夕のころ咲くので「牽牛花(けんぎゅうか、けんごか)」、毎朝次々に咲くので「朝な草」という呼び名もある。
「蕣」は通常「むくげ」をさし、読みに「むくげ・きはちす・あさがお」がある。

 

 朝がほや一輪深き淵のいろ 与謝蕪村
 朝貌や惚れた女も二三日 夏目漱石
 朝顔やすでにきのふとなりしこと 鈴木真砂女
 朝顔の花うつくしく妻老いし 京極杞陽

【2017.08.16 Wednesday 08:30】 author : 杉篁庵主人
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八月十五日

腕組むや今日は八月十五日 杉竹
八月十五日なほ新たなる思ひ湧く 杉竹
鐘打つや今朝は八月十五日うき身ひとつを定め兼ねつも 横雲
この国の行方は何処へ八月の十五日には落ち蝉拾う やゑ

 

今日をどう称するか、季語としては「終戦記念日」が代表されるが、この言葉に様々の理由から抵抗感のある人も多い。傍題に「敗戦の日・終戦日・敗戦忌・終戦忌」があるが、そこに込める思いは様々で、むしろ無機質な暦日「八月十五日」が象徴するもののほうが意味深く感じられる。
なお、八月十五日と同様に日付の季語として、季語「原爆忌」「広島忌」「長崎忌」の傍題に、「六日九日(むいかここのか)」が認められる。

 

これをまとめてこの忌を詠んだ代表句として次の句がある。
 八月や六日九日十五日 諫見勝則・荻原枯石


ところで、この句は「八月の・八月は」も含め数人の作者があげられる。盗作というのではなくこの発想は自然と生まれるものだろう。

 

 魔の六日九日死者ら怯え立つ 佐藤鬼房

 

 暮れはててなほ鳴く蝉や敗戦日 石田波郷
 甲高きラジオの時報終戦日 片山由美子
 魚に塩ふつて八月十五日 栗原雅代
 八月十五日どどどどどどと浪 篠崎圭介

 

【2017.08.15 Tuesday 07:21】 author : 杉篁庵主人
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蜻蛉(とんぼ)

蜻蛉飛ぶ空の高みに風のあり 杉竹
さざなみと遊ぶや蜻蛉五六頭 杉竹
逢ふ事を頼めど薄き秋津羽の契りとはしる秋の空なり 横雲
羽薄い蜻蛉を釣った秋の野を面影追ってひとりさまよう やゑ

 

トンボは季語では秋のものとされている。傍題が大変多い季語。「蜻蜓(やんま)・鬼やんま・銀やんま・ちゃん・渋ちゃん・腰細やんま・黒やんま・更紗やんま・青蜻蛉・塩辛蜻蛉・塩屋蜻蛉・塩蜻蛉・麦藁蜻蛉(むぎわらとんぼ)・麦蜻蛉・猩々蜻蛉(しょうじょうとんぼ)・虎斑蜻蛉・高嶺蜻蛉・こしあき蜻蛉・胡黎(きやんま)・精霊蜻蛉・仏蜻蛉・赤蜻蛉・秋卒(あかえんば)・秋茜・深山茜・眉立茜・のしめ・のしめ蜻蛉・八丁蜻蛉・蝶蜻蛉・腹広蜻蛉。昔蜻蛉・秋津(あきつ・あきづ)・えんば・えんま・とんぼう・蜻蛉釣」
なお、「蜻蛉」は、秋の季語だが、「糸蜻蛉(燈心蜻蛉・とうすみ蜻蛉)」や「川蜻蛉(かねつけ蜻蛉・鉄漿蜻蛉(おはぐろ))」は夏の季語。

 

 行く水におのが影追ふ蜻蛉かな 千代女
 遠山が目玉にうつるとんぼかな 小林一茶
 赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり 正岡子規
 草渡る風の蜻蛉を生みにけり 龍橙風子

 

【2017.08.14 Monday 07:07】 author : 杉篁庵主人
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