「さんこうあんにちじょう」は、HP「杉篁庵」(sankouan)の1頁です。
主にその日の庭の花の写真を掲載しています。
 
年用意

年用意とて部屋に物溢れ居り 杉竹
あれこれと物引き出され事始め 杉竹
恋ひかねて残りすくなき身をいとひ老いていそがぬ事始めかな 横雲
老い妻とさてと正月事始するもしないも心のままに やゑ

 

新しい年を迎えるために、煤掃き、餅搗、床飾り、春着の仕立てなど、種々の用意をすることを「年用意」という。おせち料理の材料をまとめ買いしたりもする。
十二月十三日は「正月事始」、一年を締めくくり新年を迎える準備に取りかかる日である。「煤払い・餅つき・松迎え・年木」などを始める日ということだ。歳暮の挨拶もこの日からという。関西の風習である。特に京都祇園の事始は有名で、芸妓・舞妓たちが「おことうさんどすー」といいながら、世話になっている茶屋や稽古ごとの師匠のところにあいさつに行く。いよいよ年の瀬と感じさせる風習である。
年賀はがきの引受開始が12月15日、やがて「年の市」も出始める。浅草の「納めの観音」17〜19日もその一つ。

 

 京なれやまして祇園の事始 水野白川
 年用意日々の掃除もその積り 古賀志津子
 心にも捨つるものあり年用意 山田弘子
 すぐ妻を呼ぶ年用意始まれり 白岩 三郎

【2017.12.13 Wednesday 06:54】 author : 杉篁庵主人
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霜枯

霜枯の庭に翁は座り居り 杉竹
霜枯や赤き実拾ふ鳥の声 杉竹
みみせせに青女の息のかかれるもいかにせよとか人のつれなき 横雲
霜枯の庭にひとりで佇んであなたは誰を偲んでいるの やゑ

 

晴れた寒夜、空気中の水蒸気がそのまま冷え、屋外の物や地面にふれて、その表面についた氷が「霜」。
季語「霜」の傍題の数は「雪」に及ばないが、「霜晴」をはじめとして、「大霜、深霜、朝霜、夕霜、強霜、霜の声、霜凪、霜雫、霜の花、霜日和、霜だたみ、霜解」とたくさんある。
「青女」という季語もそのひとつ。青女は、もともとは霜・雪を降らせる女神をいうようだが、霜の異称にもなった。
「霜枯」は一霜ごとに草木が枯れてゆく様子をいう。

 

 霜枯の崖見て朝の蒸しタオル 鈴木鷹夫
 ほつかりと梢に日あり霜の朝 高浜虚子
 霜柱土の中まで日が射して 矢島渚男
 隠し持つ狂気三分や霜の朝 西尾憲司

【2017.12.12 Tuesday 06:21】 author : 杉篁庵主人
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冬鷺

冬鷺や宿への道の陽の光る 杉竹
夕風に動かぬ冬の鷺一羽 杉竹
月きよみ水面光るもひそやかに立ちて動かぬ冬の青鷺 横雲
動かない冬の鷺見る店先に蕎麦湯の香りゆるり漏れきて やゑ

 

「冬鷺・残り鷺」は、冬の間、日本に留まる鷺の総称。サギ科には様々な属があるが、冬鷺の多くはコサギ属とアオサギ属である。灰色の冬の景の中で白い小鷺「白鷺」はひときわ目立つ。「青鷺」の体色は灰色を帯びた青。「残り鷺」とは冬になっても南に帰ることができなかったものをいう。

 

 冬の鷺歩むに光したがへり 加藤楸邨
 鷺點じ日輪點じ大冬田 星野立子
 鷺とんで白を彩とす冬の海 山口誓子
 浦安の海また痩せて冬の鷺 高木喬一

【2017.12.11 Monday 06:51】 author : 杉篁庵主人
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枯欅

冬欅一樹の影に風の音 杉竹
原宿の欅枯葉を踏んでみる 杉竹
散らば散れひとりながむる枯欅なぞや恋しく椋鳥の飛ぶ 横雲
生真面目にすっぽんぽんの冬欅椋鳥が飛ぶ夕焼けの中 やゑ

 

「名の木枯る」という語がある。名の知られた種類の木が枯れるのを言う。俳句独特の表現であるが、普通は「欅枯る」とか「銀杏枯る」のように、対象となる木の名をつけて用い、「名の木枯る」という語は用いない。

冬はケヤキの美しい枝ぶりがよく見える。

 

 大空に罅走らせて枯欅 西村和子
 その中に月まどかなる冬欅 深見けん二
 満月をからめ獲りたる枯欅 伊藤いと子
 冬欅あまたの星を泊まらせて 田中翠

【2017.12.10 Sunday 05:37】 author : 杉篁庵主人
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お汁粉

お汁粉に息吹きかけて旅の茶屋 杉竹
参詣を終えし湖畔の汁粉かな 杉竹
ひと椀の熱き汁粉に二人して息白くせり芦ノ湖湖畔 横雲
旅先の汁粉ひと椀分け合ってどっちのバスに乗るかと思案 やゑ

 

「小豆粥・鏡餅」などは新年の季語になっているが、「お汁粉」は季語にならないのか、多くの歳時記には出ていない。木枯らしが吹く季節になると、温かいお汁粉が恋しくなり、冬の季語にしてもいいように思うが、中に入っている「白玉餅」は夏の季語である。それに倣って「白玉ぜんざい」もその傍題として夏の季語になるという。

 

 チャリティーの薄き汁粉に人の列 平井カヅコ
 身に入むや汁粉にしづむ玉ひとつ 橋本榮治
 空海の寺の朱塗の汁粉椀 山田春生

 

【2017.12.09 Saturday 07:12】 author : 杉篁庵主人
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冬座敷

妻の座に陽の差す朝餉冬座敷 杉竹
冬座敷湯上りに背に陽の差せり 杉竹
枯れゆける言の葉散りて冬座敷逢ふよしもなく陽のなのめなり 横雲
床の間に朝陽差し込む冬座敷今日はあなたが来る予感して やゑ

 

冬らしくしつらえた座敷をいう。締め切った襖、障子に炬燵、火鉢が置かれた部屋。
また、硝子戸越しに庭が見えたり障子に冬木の影を落としたりする。
夏座敷は涼感を感じさせるのに対し冬座敷はほのぼのとした暖かさを感じさせる。

 

 盆景の波白妙に冬座敷 吉屋信子
 人形のやうに坐りて冬座敷 柿本多映
 冬座敷くぬぎ林の中にあり 大峯あきら
 冬座敷客に日向のよきところ 星野 椿

【2017.12.08 Friday 07:32】 author : 杉篁庵主人
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冬の宿

 

絶え絶えに風の音聞く冬の宿   杉竹
冬の朝日のきらめきて露天風呂 杉竹
冬の日のたちまち暮れて宿の灯の風に揺るるがなほかなしけり  横雲
夕暮れに着いた湯宿の冬枯れの庭を巡って悲しい想い  やゑ

 

 

「冬館」という季語がある。
館という言葉を使うと、ふつうの小さな家ではなく古い洋館や由緒ある屋敷などが思い浮かぶ。枯木立などに囲まれて蕭条とした趣がある。
昨日の宿は戦後すぐ旧財閥の別荘を旅館にしたという。

 

 冬の宿忍び泣くにも人目ある 下村槐太
 冬の宿谺を返し夕暮るる 横光利一
 夜に着きて硝子戸多き冬の宿 右城暮石
 湯ぼてりの四肢より眠る冬の宿 尾花園

 

【2017.12.07 Thursday 06:08】 author : 杉篁庵主人
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満天星紅葉

甘え声満天星紅葉の陰に犬 杉竹
遠目には満天星紅葉燃えていて 杉竹
満天星の燃ゆれど冬ぞ人めかれ散る紅葉はに風の冷たき 横雲
赤々と冷たい風に燃えているドウダンツツジが君を呼んでる やゑ

 

ドウダンツツジ(灯台躑躅・満天星躑躅)のドウダンは灯台の転訛で枝の分かれ方が灯台の脚に似ていることに由来するという。「満天星」の表記は、漢語で白い小さな花がいっぱい咲いているようすをたとえている。春の可憐な白い花と秋の紅葉が楽しめる。冬になってもまだまた赤く燃えている。

箱根まで入ったら満天星躑躅はすっかり散っていた。

 

 栗鼠跳んで満天星紅葉越え行けり 水原秋櫻子
 生垣をつづる満天星紅葉かな 山田梅屋
 僧提げし満天星紅葉飛び火せよ 手塚美佐

 

【2017.12.05 Tuesday 05:50】 author : 杉篁庵主人
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納豆

納豆を食べて出る旅せはしなし 杉竹
藁納豆一人一本今朝の膳 杉竹
冬の朝啜るは熱き納豆汁時へだつればなどか懐かし 横雲
納豆を擂ってた時の君の影懐かしい味白いエプロン やゑ

 

納豆は冬の季語になるようだ。
歳時記では「納豆汁」を冬の季語としている。納豆汁はすりつぶした納豆を味噌汁に混ぜ、豆腐や野菜を具にした汁で、身体が温まる冬の汁物である。
その年に収穫した新穀の大豆で納豆を作ったところから季節感が生まれたのだろう。老舗の佃煮屋の新橋玉木屋では藁納豆は冬期限定販売で四月までである。また、正月納豆のために師走の25日に仕込むのがあちこちで見受けられたという。
昔は、「ナットナット、ナットー」と通りを売り歩く声が冬場によく響いていた。

 

 納豆切る音しばし待て鉢叩き 松尾芭蕉
 朝霜や室の揚屋の納豆汁 蕪村
 納豆の糸引つ張って遊びけり 一茶
 子を負ふて孀と見ゆれ納豆賣 正岡子規

【2017.12.05 Tuesday 05:41】 author : 杉篁庵主人
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布団干す

猫の座を奪いて我の布団干す 杉竹
陽の匂い嗅いで取り込む干布団 杉竹
逢ふことの遠のく朝や偲びつつさてもいかにと布団干しけり 横雲
布団干し遠くの山がよく見えてあなたの影におはようという やゑ

 

小春の天気には布団を干す。
冬の好天の日曜はアパートやマンションのベランダに布団が並ぶ。

 

 新築のベランダくまなく布団干す 金元喜代子
 布団干す人と目の合う日和かな 守田 実
 布団干す雲の行方を追ひ乍ら 稲畑汀子
 干蒲団叩いて日暮れ早めけり 阿部静雄

【2017.12.04 Monday 08:04】 author : 杉篁庵主人
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