「さんこうあんにちじょう」は、HP「杉篁庵」(sankouan)の1頁です。
主にその日の庭の花の写真を掲載しています。
 
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桃の節句に因んで




上巳の節句は、もともとは野山に出て薬草を摘んでその薬草で体のけがれを祓って健康と厄除けを願う行事(中国では河で禊ぎを行う「上巳の祓(じょうしのはらえ))があり、この行事が、災厄を代わりに引き受けさせた紙人形を川に流す「流し雛」へと、さらに宮中の紙の着せかえ人形で遊ぶ「ひいな遊び」とが融合して雛祭りの桃の節句になったようです。

源氏物語には、このひいな遊びが「紅葉賀」巻に描かれています。
男君は、朝拝に参りたまふとて、さしのぞきたまへり。
「今日よりは、大人しくなりたまへりや」とて、うち笑みたまへる、いとめでたう愛敬づきたまへり。
いつしか、雛をし据ゑて、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具に、品々しつらひ据ゑて、また小さき屋ども作り集めて、たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。
[第四段 新年を迎える]
 男君は、朝拝に参内なさろうとして、お立ち寄りになった。
 「今日からは大人らしくなられましたか」
 と言って微笑んでいらっしゃる、とても素晴らしく魅力的である。早くも、お人形を並べ立てて、忙しくしていらっしゃる。三尺の御厨子一具と、お道具を色々と並べて、他に小さい御殿をたくさん作って、差し上げなさっていたのを、辺りいっぱいに広げて遊んでいらっしゃる。
源氏と十歳になった若紫の新年の様子です。「お人形の中の源氏の君を着飾らせて、内裏に参内させる真似などなさ」って遊んでいる様子が描かれています。

「桃の節句」とも言われるが、この時季、「桃花笑春風(とうかしゅんぷうにえむ) 」という軸が茶席に掛けられる。
これは、崔護(さいご)の七言絶句から採った句といわれている。

   「人面桃花」 崔護
 去年今日此門中、
 人面桃花相映紅。
 人面不知何處去、
 桃花依舊笑春風。
   去年の今日 此の門の中、
   人面 桃花あい映じて紅なり。
   人面 いずれの処ところに去るや知らず、
   桃花 旧に依りて 春風に笑む。

去年の今日此の門の中であなたとお逢いしました。
あなたの顔の紅の色と桃の花の紅の色が互いに照り映えておりました。
今門は閉ざされていて、あなたがどこに行ってしまわれたのかは知れないまま、
ただ桃の花だけが去年と同じ様に春の風に揺られて微笑んでいます。


桃といえば、王維(おうい)の六言の絶句が思い出される。

  田園楽(でんえんらく) 王維
 桃紅復含宿雨、 柳緑更帯春煙。  
 花落家童未掃、 鶯啼山客猶眠。  
   桃は紅にして 復(また)宿雨(しゅくう)を含み、
   柳は緑にして 更に春煙(しゅんえん)を帯ぶ。
   花落ちて 家僮(かどう)未だ掃はず、
   鶯啼いて 山客(さんかく)猶ほ眠る。

桃の花はくれないに咲き、ゆうべの雨をふくんでいっそうあざやかな色を見せ、
柳の芽はみどりに萌えいで、春のかすみを帯びてますますぼんやりとけだるい風情。
花びらが庭先に散りしいていても、召し使いはまだ掃除もしない。
うぐいすがしきりにさえずっているなか、山荘住まいの私といえばまだ夢うつつである。


【2011.03.02 Wednesday 21:08】 author : 杉篁庵主人
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