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白き秋風




今朝は窓からの風が快い。

 厨窓開ければ色なき風に会ふ  阿部喜恵子
 丸窓に色なき風の通り抜け  田中康委子

「色なき風」の季語が浮かんだが、同時に「石山の石より白し秋の風 松尾芭蕉」の句も浮かんだ。
風を白く感ずるのは秋かと思い、風の色を「白」と詠う句をいくつかみる。
すると、夏から冬までの句があった。

夏・甘露忌に白き風呼ぶさるすべり 木内彰志
夏・病院は緑陰ナースは白き風 高澤良一
夏・白き風走る蓮田の果ては海 工藤芳久
夏・香に顕ちて風蘭白き風となる 穂坂日出子
夏・ちんぐるま群れ咲き白き風となる 大高 時子
秋・物干に白き風あり法師蝉 乙津喜美
秋・蕎麦咲くや鼻をまづさす風白し 石川桂郎
冬・千鳥なく三保の松原風白し  正岡子規

ところで似た語の「白南風(しらはえ)」は晩夏の季語である。
夏になると、日本列島には、太平洋高気圧から南東の季節風が吹き寄せるようになる。冬の北風に対し、夏の南風(みなみかぜ・みなみ・はえ)と呼んできた。この南風のうち、梅雨時に吹いて黒雲を運ぶ湿気の多い風を黒南風(くろはえ)と呼び、梅雨明に吹く雨雲を一掃するような爽やかな風を白南風(しろはえ)と呼んでいる。
「白き風」の句に夏の句が多いのは「白南風」の印象からだろうか。

秋の風はこれではないが、その涼しさからやはり「白」の印象が強い。
これを「白風」ともいうようだが、「色なき風」としたのが「俳諧」なのであろう。
調べてみると、「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな 紀友則」によるといわれている。また、もとは「素風」(そふう)という中国語を大和言葉にしたものともいわれる。素風も秋の季語で歳時記にあるが、古代の陰陽五行思想から四季を「青春、朱夏、白秋、玄冬」とし、そこから秋を「白秋」=「素秋」といい、秋風を「素風」といったという。

  みちのくの素風に晒す琴の木地  松本喜久江

何れにせよ今朝の窓からの風は「白き秋風」であったかと思う。

 蝉殻の残れる窓に風白し 
 秋草をひそと撫ぜゆく風白し

【2012.08.15 Wednesday 11:43】 author : 杉篁庵主人
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