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未だ老と為さずも



昨日記した岩波新書の「中国名文選 」に関連して。
この中の「酔翁の意は酒に在らず」の章に欧陽修の「酔翁亭記」が紹介されている。
これがなかなかに面白かった。
作者は歐陽修〔歐陽脩・欧陽修(1007〜1072)〕、字は永叔、号は酔翁、また晩年は六一居士と号した、吉州の永豊(現・江西省)の人。北宋仁宗から神宗期の政治家、詩人、歴史学者て、唐宋八大家の一人である。
4歳で父を失い、家は貧しく、母親が地に字を書いて読むことを教えたという。24歳で科挙の進士に合格、ついには、参知政事(副宰相)までになった。
この文は慶暦6年(1046)左遷され滁州太守だった時に書かれたもの。きわめて生き生きとした描写で醉翁亭の美しい環境と変化の多い自然、そして皆が一緒に楽しむ情景を描き出して、鬱憤のたまる複雑な感情を紛らしたものといわれる。諧謔(ユーモア)のある名文であろう。人間不遇の時のほうがいい仕事を残す。原文は後述。



これと同時期に記された詩に、「題滁州醉翁亭」がある。
これは、酔翁亭を讃え、その情景の美しさと酒の楽しみを詠って、「醉翁亭記」と互いに補完する詩でもある。


  「題滁州醉翁亭」歐陽脩
四十未為老、醉翁偶題篇。
醉中遺萬物、豈復記吾年。
但愛亭下水、來從亂峰間。
聲如自空落、瀉向兩檐前。
流入巖下溪、幽泉助涓涓。
響不亂人語、其清非管絃。
豈不美絲竹?絲竹不勝繁。
所以屢攜酒、達步就潺湲。
野鳥窺我醉、溪雲留我眠。
山花徒能笑、不解與我言。
惟有巖風來、吹我還醒然。



 「滁州の酔翁亭に題す」欧陽修
四十未だ老と為さずも、酔翁偶(たま)さか篇に題す。
酔中に万物を遺(わす)る、豈に復た吾が年を記すならんや。
但だ乱峰の間より来たる亭下の水を愛す。
声は空より落つる如く、瀉(ながれくだ)り向かふは両の檐(のき)前(さき)。
巖下の溪より流れ入り、幽泉の涓涓たるを助く。
響きの人語に乱れず、其の清(すが)しきは管絃にあらず。
豈に絲竹より美しからずや 絲竹は繁に勝れず。
所以(ゆゑ)に屢(たびたび)酒を携へ、潺湲に就きて達歩す。
野鳥我が酔へるを窺ひ、溪雲我が眠りを留む。
山花徒らに笑ひ能(う)るも、我と言を解さず。
惟(た)だ巖風の来る有りて、我を吹くに醒然として還る。


・滁州(ちょしう):南京の西北郊。唐淮南東道(現・安徽省滁県)
・酔翁:欧陽修の号。
・偶:思いがけず。たまたま。
・篇:首尾の整った詩歌・文章。
・題:書き記す。
・遺:忘れる。
・豈:《反語を示して》どうして…でありえようか、…である道理があろうか。
・檐:軒、ひさし。
・瀉:速く流れる、流れ下る。
・幽泉:奥深い、ひっそりした泉。
・涓涓(けんけん):小川などの水の細く流れるさま。ちょろちょろ。
・絲竹(しちく):琴を中心にした小編成で演奏される楽曲。絲竹管絃。
・繁:込み入っている、複雑な。
・屢:たびたび、何度も。
・達歩:行き歩く。
・潺湲(せんくわん・せんえん):水の流れるさま。また、その音を表す語。
・惟有:ただ…だけがある。=唯有。
・巖風:岩峰より吹き降ろす風。
・醒然:酒の酔いから覚める。




「酔翁亭記」の原文
    醉翁亭記    歐陽修
  環滁皆山也。其西南諸峰,林壑尤美。望之蔚然而深秀者,瑯琊也。山行六七里,漸聞水聲潺潺;而瀉出於兩峰之間者,釀泉也。逢回路轉,有亭翼然臨於泉上者,醉翁亭也。作亭者誰?山之僧智僊也。名之者誰?太守自謂也。太守與客來飲於此,飲少輒醉,而年又最高,故自號曰醉翁也。醉翁之意不在酒,在乎山水之間也。山水之樂,得之心而寓之酒也。
  若夫日出而林霏開,雲歸而巖穴暝,晦明變化者,山間之朝暮也。野芳發而幽香,佳木秀而繁陰,風霜高潔,水落而石出者,山間之四時也。朝而往,暮而歸,四時之景不同,而槳亦無窮也。
  至於負者歌於塗,行者休於樹,前者呼,後者應,傴僂提攜,往來而不絕者,滁人遊也。臨谿而漁,谿深而魚肥;釀泉為酒,泉香而酒洌;山肴野蔌,雜然而前陳者,太守宴也。宴酣之樂,非絲非竹,射者中,弈者勝,觥籌交錯,起坐而諠譁者,眾賓懽也。蒼顏白髮,頹然乎其間者,太守醉也。
  已而夕陽在山,人影散亂,太守歸而賓客從也。樹林陰翳,鳴聲上下,遊人去而禽鳥樂也。然而禽鳥知山林之樂;而不知人之樂,人知從太守遊而樂,而不知太守之樂其樂也。醉能同其樂,醒能述以文者,太守也。太守謂誰?。廬陵歐陽修也。

 
解説は先の本を読んでもらいたいが、気が向いたら自分でも書いてみたいと思う。
【2008.05.29 Thursday 18:58】 author : 杉篁庵主人
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