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名ばかりの『教育振興』



教育振興基本計画は文部省の杜撰な計画を財務省や総務省に衝かれ、結局は何の具体性も持たないままの空疎なものになった。この国の教育を一体誰がまともに考えているのだろう。指導的立場にある官僚と政治家がないがしろにしている状態では「国」がたたない。
「教育振興基本計画」(閣議決定)(PDF)(平成20年7月1日)


教育振興基本計画が閣議決定されたのを受けて、これを取り上げた社説一覧。


2008年7月4日
【秋田魁新報】 教育振興基本計画 深みなく実効性に疑問
【神戸新聞】 教育基本計画/数値目標なしで進むのか
【南日本】 [教育基本計画] 看板倒れの「十年の計」
2008年7月3日
【毎日新聞】 教育振興計画 骨太の像なく総花のむなしさ
【読売新聞】 教育基本計画 必要な予算を精査すべきだ
2008年7月2日
【宮崎日日】 教育振興基本計画
【山陽新聞】 教育基本計画 本当に投資拡充できるか
【山陰中央新報】 教育振興基本計画/ツケ回る現場はたまらぬ
【東京新聞】 基本計画決定 名ばかりの『教育振興』
【日経新聞】 「教育」が見えぬ教育振興計画
【朝日新聞】 教育基本計画―学力向上へ大胆な投資を
【西日本新聞】 「つけ」は現場に回るのか 教育基本計画
【信濃毎日新聞】 教育基本計画 実現の道筋が見えない
08年7月1日 
【高知新聞】 【教育振興計画】人も予算も増えないでは
08年6月29日 
【琉球新報】 教育基本計画 人材育成目指し予算拡充を


二本転載。


東京(中日)新聞2008年7月2日
【社説】
基本計画決定 名ばかりの『教育振興』
 閣議決定された教育振興基本計画は原案にあった財政支出を伴う記述が削られたうえ「国の財政は厳しい」との文言が加わった。十年先を見通すという触れ込みだが、名ばかりの「教育振興」だ。
 基本計画は改正教育基本法に基づいてつくられ、十年先の教育のあるべき姿を示し、今後五年間で取り組む政策を体系的にまとめたものだ。中央教育審議会の答申を受けて文部科学省が原案をまとめ、各省協議などを終えて一日、閣議決定した。
 決定では、国内総生産(GDP)に占める公的教育投資の比率を現在の3・5%から「経済協力開発機構(OECD)諸国の平均5・0%を上回る水準を目指す」という記述が原案から削られた。
 3・5%で約十七兆二千億円だから、5%にするには約七兆四千億円上積みしなければならない。原案が計画として認められれば多大な財政支出を伴うことになるため、財務省が猛反対した。
 文科省はこの財政支出によって公立の教職員定数を二万五千人程度増やす記述も原案に盛り込んでいた。行財政改革を進めようとする政府の方針と逆行するため、これには総務省が反対に回った。
 計画をみると、その二カ所が削除されただけでなく、具体的な施策では「拡充」「充実」との字句が「支援」「推進」に直され、新たに「国の財政状況は大変厳しい」という文言が加筆された。
 財務、総務両省の主張が通ったかたちだが、今回の各省協議は年度ごとの予算折衝ではなく、これからの教育のあり方を決める話し合いだった。そこでの結論が財政再建優先では、基本計画の上に乗る「教育振興」の名が泣く。
 最終的には関係閣僚が調整したのだから、これが教育への福田政権の姿勢と言うこともできる。
 学習指導要領が改定され、理数を中心に主要教科の授業時間が増え、小学校では英語教育が導入される。加えて道徳教育の充実と、長期的に低下傾向にある子供の体力向上への取り組みも必要だ。
 さらに、いじめや不登校への対策も怠るわけにはいかない。現場の先生たちの多忙ぶりが問題視されて久しいが、熱意や使命感だけに頼るにはもはや無理がある。教育投資の大半は教職員予算だが、計画で厳しい見通しが示されたのだから、現場の仕事は増えることになりそうだ。
 これで公教育の立て直しは図れるのか。十年先、暗たんとした状況に陥っていないか。



毎日新聞 2008年7月3日
社説:教育振興計画 骨太の像なく総花のむなしさ
 この1カ月余、数値目標を入れる入れない、で文部科学省と財務省などが対立し、結局は文科省が完敗した。そして教育振興基本計画がようやく定まった。そんな政府内の争いが、国民の前から教育論議を遠ざけた。これがそもそもの間違いだ。いくら官僚や文教族議員が熱くなっても、国民が冷めていては不毛なコップの中の嵐にすぎない。
 そもそも教育振興基本計画というしかつめらしい名の政策は何か。06年に改正された教育基本法が政府に策定を義務づけた。10年先のあるべき状況を見据え、5年間でなすべき施策を定めるという。
 教育基本法の改正前、改正は無用とした反対派に対し推進側が「改正基本法による振興基本計画で長期に安定した財源を確保し、条件整備が着実に進められる」と利点を強調し、説得材料にした経緯もある。
 だが、一方で政府は支出抑制を基本とする行財政改革を進める。さらに「教育再生」を最重要政策に掲げた安倍晋三政権が突然倒れたことも逆風になった。
 不可解な展開もあった。
 基本計画案は文科相の諮問機関・中央教育審議会が4月に答申したが、財政引き締めの状況を踏まえ数値目標はほとんどなかった。これには自民党文教族などから強い不満が出、その意を受けて文科省は(1)教職員定数を5年で2万5000人増やす(2)10年で教育投資額の国内総生産(GDP)比を今の3・5%から経済協力開発機構(OECD)諸国平均5%へ−−などと数値を入れた案を作成、財務省との折衝に臨んだ。
 授業時間が大幅に増え、小学校に英語も導入する新学習指導要領を円滑に実施するにはこれだけ先生が必要。教育にかける金を先進国並みにしないと高等教育などで太刀打ちできなくなる−−などという主張だ。だが財務省は納得せず、投資の根拠や成果の見通しを求めかみ合わなかった。
 もちろん基本計画はただ数値獲得を主眼としているのではない。子供の自立、学力と体力、世界最高水準の大学、留学生受け入れ拡充、校舎耐震化などあらゆる課題が「あれもこれも」とばかり盛り込まれた。
 すべて重要だ。しかし、大半は既に個別施策としてやったり、進めることができるもので、新たに引きつける理念、訴えかけてくる意思に乏しい。10年後の社会に向け、どのような人格、人材を教育が目指し、そのため5年間に何を最重点にどのように学校、社会、家庭の教育のかたちをつくり出すか。
 何をさておいても、の目標が国際学力コンテストの順位を上げることでは寂しい。高々とした理念と、一人一人の子供や学生に思いを致せる想像力に満ちた教育目標と手法こそが、今求められている。
 それが国民世論を引きつけ、財務当局を説得する。毎日新聞 2008年7月3日 東京朝刊


【2008.07.05 Saturday 22:31】 author : 杉篁庵主人
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