春深む堤を二人バイク漕ぐ 杉竹
春耕の土の香濡れてまどかなり 杉竹
春深むサイフォンの香に浸る昼 杉竹
月光に白きゴージャス雪柳深まる春を讃えて揺らぐ 横雲
風に揺れこんもり白い雪柳昼の輝き夜のしずもり 八慧
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淡雪のはつか積れる夜明けかな 杉竹
半世紀二人の歩みミモザ咲く 杉竹
仲春の風に誘はれ人に会ふ 杉竹
春半ば祝ふ半寿のクラス会老いの歓び語り合ひたり 横雲
仲春の庭を彩るあれこれを探り巡って胸ときめかす 八慧
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藍匂ふ部屋の片隅雛飾る 杉竹
雛の宴嫁さぬ娘の声高し 杉竹
勝浦の潮の香浴びて雛遊 杉竹
古き文読み返しつつ雛の酒花の散りしにを惜しむ宵なり 横雲
懐かしき風吹きぬける雛の家薄くなりゆく面影を追う 八慧
「上巳」 横雲
尋春獨至桃花谷
淑景幽光求一宿
妙囀隨風忽夢中
明朝恨別仙?哭
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二の午を報す門口声高し 杉竹
二の午の気配ひしひし祝詞ほぐ 杉竹
榊など整ふる二の午の朝 杉竹
思ふ人の安らぎ願ふ二の午の祝詞にのりて豊後梅咲く 横雲
二の午の祝詞に込めた穏やかな日々の願いのような梅の香 八慧
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早き春求めて寺の門を入る 杉竹
境内の紅白の梅そろひ咲く 杉竹
早春の谷にはつかに残る雪 杉竹
早咲きの桜咲きたる境内に人影のなき春やかなしき 横雲
境内の奥に鬼縛の花がひっそりと咲く早春の寺 八慧
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辿り来し湯島の紅白梅爛漫 杉竹
石段のよろよろ歩き梅薫る 杉竹
老二人梅見の〆の汁粉かな 杉竹
探梅の空見上げれば熟み柿をつつく椋鳥飛び立ちにけり 横雲
懐かしい名が記されるサイト見て思い飛び行く梅散る里に 八慧
「殘夢猶迷」 横雲
鶯啼古木破殘夢
舊誼梅花馥碎紅
寂滅逍遙春二月
凝睇可耐冽寒風
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何もなく更くる霜夜の音聞きぬ 杉竹
遠き日の光れる影ぞ霜柱 杉竹
蝋梅や光の濡るる田舎道 杉竹
奥能登の霜夜の月の傾ぶきぬ幸のうすきも命なりけり 横雲
生き延びてうれれしかなしと涙して今日の命を愛しむあした 八慧
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大寒の風に吹かれて別れ来し 杉竹
被災地の報道画面雪景色 杉竹
友忌みて靴音固し寒夕焼 杉竹
大寒の空に遠富士光りたり冴えたる風の橋を急げる 横雲
サヨナラの言えないままに冬の日が赤々染まり暮れてくばかり 八慧
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老木に寒紅梅の一二輪 杉竹
萎れしも寒紅梅に香のほのか 杉竹
寒風やなせか機嫌の良き犬と 杉竹
女正月勝手元には団子ありあんこみたらしゴマに紅白 横雲
夕暮に寒紅梅が溶けていき空には細い月が出ていた 八慧
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正月の悲惨地震(なゐ)の里の銀河 杉竹
七日過ぎ余震のつづく能登はるか 杉竹
世は暗し七種粥の熱さかな 杉竹
明け初めになゐふる報せ重なりてなほ落ち着かぬままの松明 横雲
つらいねといえど応えずもだの声遥かに思う里に雪降る 八慧
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歳旦三つ物
遠富士やとしのはじめの峰明り
稚児のめでたる音はぽつぺん
四つ五つ龍の玉摘み掌に
傘寿過ぎ屠蘇祝へどもままならぬこの一年を如何に生きまし
(只管凡庸なるを願ふ)
甲辰年頭
甲辰元日穩雲龍
吉上春光滿秀峰
易老銷魂何恨免
含愁獨佇愛冬松
数へ日の急かるるひと日晴れ渡る 杉竹
薄雲る名残の空や人恋し 杉竹
走り去る兎の影や年惜しむ 杉竹
老らくの春はきたるやうれひつつおぼつかなしの年の暮かな 横雲
暮れてゆく年を数えて来る春の夢をいくつか綴っては消す 八慧
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一人寝の夢に寝覚むや霜の声 杉竹
霜の声孤高の人の遥かなり 杉竹
明けやらぬ霜夜の屋根に月細し 杉竹
霜白く光れる草を踏みゆけばはかなきことのいたむ朝かな 横雲
散り敷いた枯れ葉に綺羅の霜光り予報通りに晴れる冬空 八慧
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咲き競ふ無人の家の寒椿 杉竹
花びらのひとひら散りて小春凪 杉竹
寒椿齢重ぬる別れあり 杉竹
人住まず荒れたる庭の寒椿見る人なくも咲き誇りたり 横雲
冬の陽をうららに浴びて咲いている椿の色の群れのたゆたい 八慧
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とりどりの枯葉踏む音森の道 杉竹
我独り薄夕焼の冬木立 杉竹
冬ざるや光一条差す林 杉竹
欄干(おばしま)に寄りて枯葉の舞ふを見し陽の沈まむとするも哀しく 横雲
生きること尋ねて暮れる冬の日が明日の夢をかすかに照らす 八慧
寒風 横雲
冬暉未沒偶倚欄
浴後過風宙轉寒
澗碧山紅共可樂
吾生夢幻見伊難
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富士望む乗換駅は冬日差 杉竹
ひとり入る露天湯熱し星冴ゆる 杉竹
冬茜飛行機雲の交差せり 杉竹
吹き荒ぶ野風をさむみあえかなる日溜りの陽にはつか咲く花 横雲
山茶花がはらりと散つて冬日向静かに時が流れて消える 八慧
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唐突の木枯らし一号大銀杏 杉竹
初時雨散りたる花を濡らしけり 杉竹
おこぼ下駄小さき白足袋初時雨 杉竹
枯れ葉打つさやけき音や初時雨うらみて散れる言の葉の悔 横雲
悔やまれる思い重ねて降る時雨あてにならないあしたを嘆く 八慧
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ひたすらに続く銀杏の落葉踏む 杉竹
掃き溜めし銀杏落葉のぬくぬくし 杉竹
記念日を祝ひたる報銀杏散る 杉竹
銀杏散る空にも冬は来たりけり訪れの無き人のつれなく 横雲
陽を浴びて遠い思い出散るような銀杏落葉が舞うに見惚れる 八慧
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秋天を鳶ゆるらかに遊びをり 杉竹
冬近し水面に鴨の影群るる 杉竹
晩秋の大樹を透かす夕日影 杉竹
柿の枝の撓みて浴びる夕日影病葉透かし秋の更け行く 横雲
暮れゆけば秋の京都を懐かしむ紅葉の陰に融けた思い出 八慧
「晩秋」 横雲
懷秋獨坐少迎歡
小鳥飛來囀北欄
密語依稀遊隱沼
京都夕葉再逢難
旅のバス紅葉の中を走りぬく 杉竹
音立てて林に深く紅葉踏む 杉竹
白壁に紅葉の影の斜めなり 杉竹
別るるは落葉松しきりに降る日なり漆紅葉は手を振る如し 横雲
錦繍の紅葉のもとに佇んだふたりの時は静かに散って 八慧
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傍らに後の月待つ菊一輪 杉竹
観菊の宴を待ちて澄める風 杉竹
人影の無き部屋に菊香るなり 杉竹
草の戸に君待つ宵の菊の酒ちびりちびりと香を愛ほしむ 横雲
山荘のストーブに寄り飲む酒のうら寂しさに深まる夜は 八慧
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雨止みて出店賑はふ秋祭 杉竹
雨止みぬ「さし」や「地すり」の秋神輿 杉竹
厳かな祭の手締秋深む 杉竹
雨の中祭囃子の絶え間なく神輿は揉まる秋のひと日を 横雲
寺町に提灯並ぶ秋の暮祭囃子に神輿が揉まれ 八慧
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曼珠沙華歩みののろき老い二人 杉竹
かなしみのいよいよ遠く狐花 杉竹
相思華てふ名持ちて燃えてかなしかり 杉竹
曼珠沙華燃えしづもりて里の秋相思ふ人の影見えずして 横雲
面影は遠く遠くにかすみつつかなしきまでに相思花咲く 八慧
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月待てる尾花に風の河堤 杉竹
老犬のすでに眠れり居待月 杉竹
高粱酒月十八夜影無情 杉竹
偲べども金木犀の香の中に君は来たらず一人酔ひをり 横雲
一人居に尾花ささげて月待てば風の便りをよんでさびしく 八慧
「桂花(金木犀) 」 横雲
薫風夜靜桂花開
細酌篷窗半月哀
捨杖飄然須盡醉
孤雲獨去汝不來
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宵月や死を親しみて古酒の酔 杉竹
秋分や浄土近しと夕仰ぐ 杉竹
老いて泣く昔日の夢秋彼岸 杉竹
秋草の繁りに鳴ける声澄みて今宵は人のなほ恋しかる 横雲
誰となく秋の彼岸に訪う人を待つ夕暮に聞く風の音 八慧
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虫時雨地を這ふ闇の薄く濃く 杉竹
晴るるとも明日も哀し虫時雨 杉竹
虫の音の止みて草打つ雨ぱらり 杉竹
虫の音か闇に響ける耳なりか聞き分けつかず歩みとめたり 横雲
虫の音が絶えて強まる雨の音無人駅の夜寂しく更ける 八慧
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釣糸の微かの揺らぎ秋の風 杉竹
移転せし施設新し涼新た 杉竹
秋風の触れて葉裏に光あり 杉竹
女郎花揺らし秋風吹き過ぎぬつれもなき人をたのむともなく 横雲
身にしみる朝の風受け涼しさに歩を速めゆく河の辺の道 八慧
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朝日影林に射すや秋あはれ 杉竹
たそがれてひとり秋思の風に酔ふ 杉竹
たまさかに死の話する秋の夜半 杉竹
風立ちて秋こそまさるあはれなり野にも山にも八十路の身にも 横雲
ふきわたる風にあはれを数えては今日も希望の丘に登った 八慧
「秋思」 横雲
登高獨恨白髭翁
老朽陽斜做轉蓬
惜月春夢非復昔
邱山墓畔満秋風
秋高し友の愚痴にも酒機嫌 杉竹
先生と呼ばれてゐたり天高し 杉竹
一人より七人八人秋の空 杉竹
眺むればなほ澄み渡る秋の空更に悲しき風の身にしむ 横雲
火の山の煙は高く上りゆく見えなくなった希望のように 八慧
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蜻蛉飛ぶ川辺に風の波ありて 杉竹
汗拭くや八月の川光りたり 杉竹
暮れ行きて竿に動かぬ秋茜 杉竹
旧暦で祝ふ七夕袖返し暑さの峠仰ぎ見る夕 横雲
秋たちて透けるトンボの翅涼しまだ照る日にも風はそよろと 八慧
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蜩や雲の白きが目にしみる 杉竹
かなかなの声の小さき昼下がり 杉竹
膝崩す女の吐息魂迎 杉竹
秋来たる白き雲湧く深き空淡き思ひや残月白き 横雲
秋風に混じって遠く蜩の声が聞こえる朝がかなしい 八慧
思い出の作れぬままの夏の果 杉竹
夕焼や遠くの街の影見えて 杉竹
若き日の夢の途絶えて夏深し 杉竹
夏草の深くも人をおもひつつ花求むれどかれて物憂し 横雲
夏の果思い出一つ繰り返し偲んで一人夕焼を見る 八慧
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塀越えて貰ふ花陰百日紅 杉竹
百日紅溢れ零れて風白し 杉竹
青空に百日紅揺る白と紅 杉竹
花こぼす槐の下に佇めば夏の月影木の間を洩るる 横雲
思い出が遠くにかすみ夏の月泣き疲れたか木陰に眠る 八慧
「対夏月憶君」 横雲
獨在相思紺碧河
傍槐濃?惜哀多
猶疑滿月不同見
佇眺中天立白波
夏木立近づく雨の匂ひして 杉竹
ひつそりと花を隠して夏木立 杉竹
五年ぶり会ふて佇む夏木立 杉竹
物思ふ人の心か野に山に夏は緑の葉の繁りたり 横雲
尾を振って五年の時を飛び越えて犬は駆け寄る避暑の杣道 八慧
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鬼百合や今生の風纏ふ朝 杉竹
青柿の生りてたわわに風纏ふ 杉竹
見上げれば小さき堅き石榴の実 杉竹
雲湧ける丘に光れる青葡萄形見と見むも面影薄く 横雲
青葡萄甘く濡らして朝の風君の思いは光になって 八慧
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片陰を拾ひて歌の二つ三つ 杉竹
くつきりと大樹の影や盛夏なり 杉竹
早実る本堂傍の石榴かな 杉竹
薄衣を木陰の風の揺らめかし佇み居りぬ野辺のふる道 横雲
くつきりと川面に映る白いビル夏の盛りは緩く静かに 八慧
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雨上がる夏日の墓参老姉妹 杉竹
雨傘を高く差し上ぐ夏日影 杉竹
夏の日の空に描ける夢の跡 杉竹
夏盛る庵にそよと緑透く涼風吹きぬ寝転びてをり 横雲
夕立の気配に急ぐ畦道にさめざめ哭いている声満ちる 八慧
「村荘夏日」 横雲
暗?搖簾漏夕陽
夢朧風嫋擦杉篁
幾還夏至能迎老
一日無言待美鴦
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梅雨曇若き日の夢茫乎たり 杉竹
梅雨寒に目覚めて今日の予定なし 杉竹
ちらちらと田水の光り梅雨の晴 杉竹
河の水緩らかに揺る梅雨曇急ぐともなく白き船行く 横雲
梅雨の晴可愛い蝶が遊びくる擬宝珠の花山襞深く 八慧
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高原の道の辺の風姫女苑 杉竹
姫女苑雨は上がれり哀しけり 杉竹
夏草の花の揺らぎや雲白し 杉竹
不確かな君の心は揺れやまぬ夏草の花天仰ぎ見て 横雲
夏草の花に心を寄せてみる青空の下さわさわ揺れる 八慧
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庭先の四葩に淡し弦の月 杉竹
紫陽花の薄き色して濡れてをり 杉竹
紫陽花やうつむく人の艶めきて 杉竹
月の夜に来ぬ返信を待つとなく色変りたる古き紫陽花 横雲
行く人のない路地裏に紫陽花は濃くまた淡く群れ咲いていて 八慧
たまさかの旅行は中止台風来 杉竹
五月雨に犬のシャンプー迷ひけり 杉竹
再会の日程調整梅雨に入る 杉竹
つつがなく時萎れゆきしとしとと老いたる梅の実に降れる雨 横雲
梅雨空を眺めて祈るいつの日か共に歓ぶ晴れの日来るを 八慧
梅雨
感月吟風繞老梅
清黃艶熟雨佳來
怨天盡日祈平穩
獨座閨房又滿盃
]]>草刈りてどくだみ匂ふ路地の裏 杉竹
どくだみの花一斉に其処此処に 杉竹
どくだみの群れ咲く庭や狐雨 杉竹
憂きものと思ふもむなし月の夜に咲き茂りたる十薬の花 横雲
身の丈に生きてきたから蕺草(どくだみ)の花の白さがなお身に染みる 八慧
]]>
蕗の葉を摘みたる手にもほくそ笑む 杉竹
ほのかなる蕗煮る香り夕餉前 杉竹
伽羅蕗やひと日の山の思ひ出に 杉竹
夏兆す野辺に蕗の葉摘みゆけばいよいよ白き山際の雲 横雲
夏浅く別れた朝の思い出は蕗の苦さをかすかに残す 八慧
風薫る庭に句友の集ひ来し 杉竹
風薫る藁屋の縁に腰かけて 杉竹
一面に薔薇散らせたり昼の雨 杉竹
八重垣にあまたの薔薇の咲き渡る薫れる風のたよりうれしき 横雲
穏やかに若葉を揺らす風に聞く遥かな人の息のかそけき 八慧
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図書館を出づや掠める若葉風 杉竹
若葉嵐遅延の列車待ち侘びる 杉竹
新緑の光と風と遊ぶ朝 杉竹
若葉よりもるる光の風に乗る萌ゆる思ひの夏や来にける 横雲
爽やかな窓からはいる若葉風カフェに憩えば思いも萌えて 八慧
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泳ぐ鯉天にのぼるや五月晴 杉竹
老いの身に迎える端午粽の香 杉竹
黄に光り鶉蒲公英風招く 杉竹
飽かぬまにくれ行く春の霞めるも風をたよりに生くる空かな 横雲
晴れ渡る空に泳ぐや鯉幟口ずさんでる夢の舟歌 八慧
「鯉幟」 横雲
泳鯉沖天五月晴
雲浮岳麓野人行
微風撫髮迎端午
再會重齡曳杖聲
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老夫婦去りて一群れ躑躅燃ゆ 杉竹
近道へほのかに白し夕つつじ 杉竹
とりどりの躑躅の群れて盛りなる 杉竹
木の下にたが脱ぎ置きし衣かと燃ゆる躑躅やけざやかの色 横雲
さまざまの思いを染めて咲き群れる躑躅に添って揃える歩み 八慧
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岡に来て蒲公英の絮追ふてゐし 杉竹
春の野に何を追へるか駆くる犬 杉竹
愁ひつつ面影を追ふ春野かな 杉竹
遊ぶかに藤波の風きらめきて翡翠の影谷をかすめり 横雲
藤の房吹かれて揺れるせつなさに我も遥かな君の影追う 八慧
日落ちてなほ鶯の啼き続く 杉竹
鶯と蛙の合奏麓道 杉竹
雨近し鳥の散らすや山桜 杉竹
鶯の啼く古里に辿り来ぬ春の心を人は知らまし 横雲
八重桜三輪四輪咲き初めて空に光がやさしく満ちる 八慧
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清明の風の匂ひや葉の揺らぎ 杉竹
清明や遠くの雷に急かされて 杉竹
何となく生きてきていて四月馬鹿 杉竹
野に春の花咲き乱れ老が身の万愚節てふ誕生日かな 横雲
こんなにも一気呵成に花咲くも会えないままの春八十(やそじ) 八慧
「清明」 横雲
清明満月昏
獨恨織夢魂
屢欲逢幽客
尋花至一邨
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老いゆける体を包む飛花落花 杉竹
踏まずには曲がれぬ角の花の屑 杉竹
桜散る微笑む人を連れ立ちて 杉竹
なんと名を地獄の釜の蓋といふ草にひらはら桜散りくる 横雲
半月に見事見頃の花の滝おぼろおぼろの影が揺らいで 八慧
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彼岸まで散らずに枝垂れ桜かな 杉竹
牡丹餅のたつぷり粒餡彼岸講 杉竹
春分の朝の珈琲風緩し 杉竹
あだなるや雨に匂へる桜花おもひまされる人の待たれて 横雲
咲きほこる桜の下に佇んで会えない人を恃みとはする 八慧
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雪柳もつれる枝の豊かなり 杉竹
陽を浴びて日々に盛れる雪柳 杉竹
雪柳惰眠の命ゆるゆると 杉竹
春雨の枝にかかりて雪柳ゆるりと垂れて想ひの重し 横雲
会える日はいつか来るのか揺れ盛る雪柳にも思い縺れて 八慧
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春風のむかふに君の影を見て 杉竹
啓蟄や土の温みと陽の湿り 杉竹
病院の窓のカーテン春の風 杉竹
梅の花散らせる春の風強くあはれ恨みの言の葉もなく 横雲
春風に吹かれてそっと振り返る明日の自分に期待をかけて 八慧
「春風 」 横雲
梅花午下散春風
遠寺鐘聲響碧空
岳麓霞朧光駘蕩
若姿髣髴慰衰翁
何事もなく一段の雛飾る 杉竹
雪の降る音無き里や雛飾る 杉竹
残日の深き苦味や蕗の薹 杉竹
雪洞の灯し和らぐ雛の家新たの命匂ひたつなり 横雲
蕗の薹春の苦味が口中に広がる時をゆっくりと待つ 八慧
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頬白の声はいづこか沈丁花 杉竹
沈丁のほころびて香のなつかしき 杉竹
二の午の祝詞に鳥の高き声 杉竹
水茎に沈丁の香のほのかなり友遠くして老いの身辛し 横雲
沈丁が綻んでいる門の角佇む人は笑顔で語る 八慧
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春浅し風の形に浮かぶ雲 杉竹
触れなむと水面に春の雪しきり 杉竹
浅き春予定の立たぬ夢覚めて 杉竹
音もなく降りしきりつつ影もなく水面に消ゆる春の淡雪 横雲
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春立ちて雲の形と色淡し 杉竹
立春の夢に揺れをり堅蕾 杉竹
白き月出でて残照薄化粧 杉竹
ふりゆける身にも春立つ朝霞たてるをみつつひとをしのびぬ 横雲
残照に浮かぶ遠くの富士の影春立つ空に夢膨らます 八慧
「残照」 横雲
初春獨對殘照天
不拂愁雲八十年
彷彿夢魂堪一笑
餘生厭世抱花眠
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冴え渡る天に向かひて薔薇静か 杉竹
真昼時公園無人冬薔薇 杉竹
裸木の下に深紅の薔薇咲きて 杉竹
学び舎の窓より見たる冬バラを昨日の如く思ひ出だす日 横雲
寒風に萎れた薔薇の一輪を伐れば遠くで悲鳴が響く 八慧
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寒木瓜の一輪二輪色ほのか 杉竹
払暁の声弾ませて寒鴉 杉竹
冬の雨眠れる街に音もなし 杉竹
寒木瓜の薄紅色に染まりゆき別れの庭に霰散りつむ 横雲
寒木瓜は雨にまみれてやさしくもつもる月日を静かに染めて 八慧
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