「さんこうあんにちじょう」は、HP「杉篁庵」(sankouan)の1頁です。
主にその日の庭の花の写真を掲載しています。
 
握る手のちさくやはらか春の道



そよ風に桜が舞い散ることしきりである。
子供たちがそれを受け止めようと騒ぎまわっている。
玄関の横の手水鉢のような小さな池にまで散ってきている。
千鳥ヶ淵ではボートが掻き分ける花筏が揺れていた。

桂信子の句に
 さくら散り水に遊べる指五本
というのがある。
艶のある句である。

桂信子は日野草城に師事して俳句を始めている。(大正3年11月1日生まれ)。
その師・日野草城は、俳句に「肉体性」や「エロース」というようなものを取り込み、清新な感覚と甘美な抒情性で、「俳句を変えた男」ともいわれている。桂信子はよくその句風を継承し、草城のことを誰よりも尊敬し、慕っていた。しかし、草城は、信子が第二句集を出した翌年、亡くなった。(日野草城・明治34年7月18日〜昭和31年1月29日。)
信子は平成21年12月16日に90歳のその生涯を閉じた。結婚生活は夫が急逝し昭和14年〜昭和16年のわずか三年だった。

草間時彦の句に「東京に桂信子や草城忌」があり、二人の師弟関係をうたっている。
桂信子の句には「全集の濃き藍色や草城忌 」がある。

草城の句には妻を読んだ句が多いが、ここでは、それぞれの「肉体性」「エロース」「艶」といった句を拾ってみる。


日野草城の句。
 春暁やひとこそ知らね木々の雨
 をみなとはかかるものかも春の闇
 春の宵妻のゆあみの音きこゆ
 朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ  
 枕辺の春の灯は妻が消しぬ
 落ち来るは久米の仙人春の雲
 人妻となりて暮春の襷かな
 湯あがりの素顔したしく春の昼
 じやんけんの白き拳や花衣
 ひなげしや妻ともつかで美しき
 ふりあふぐ黒きひとみやしやぼん玉
 肌ぬぎやをとめは乳をそびえしむ
 やはらかきものはくちびる五月闇
 残菊のなほはなやかにしぐれけり
 そのかみの恋女房や新豆腐
 黒髪を梳くや芙蓉の花の蔭
 日あたりて覚めし女や秋の蚊帳
 牡丹や眠たき妻の横坐り
 妻が持つ薊の棘を手に感ず
 永き日や相触れし手は触れしまま
 見てゐたる牡丹の花にさはりけり
 聖くゐる真夜のふたりやさくらんぼ
 冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな
 えりあしのましろき妻と初詣
 撫肩のさびしかりけり二日灸
 ひと拗ねてものいはず白き薔薇となる

桂信子の句
 ひとづまにえんどうやはらかく煮えぬ 
 えんどうむき人妻の悲喜いまはなし
 月あまり清ければ夫をにくみけり

 きさらぎの風吹ききはみひとの夫   
 闇のなか髪ふり乱す雛もあれ
 湯上りの肌の匂へり夕ざくら     
 春愁もなし梳く髪のみじかければ
 花吹雪いづれも広き男の胸
 臥るときのてのひら白く春逝けり  
 衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く
 ひそかなる恋そのままに梅雨に入る
 身近かなる男の匂ひ雨季きたる
 ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき
 欲情やとぎれとぎれに春の蝉
 衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く
 燃ゆるもの身に夏萩を手折りけり
 女ざかりといふ語かなしや油照り
 ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜
 いなびかりひとと逢ひきし四肢てらす
 ひとり臥てちちろと闇をおなじうす
 やはらかき身を月光の中に容れ
 寄りあひてはなれて石の秋思かな
 逢ひし衣を脱ぐや秋風にも匂ふ
 すすき野に肌あつきわれ昏れむとす
 白菊とわれ月光の底に冴ゆ
 絹をもて身をつつむ秋きたりけり
 月の中透きとほる身をもたずして
 窓の雪女体にて湯をあふれしむ
 湯上りの身を載せ雪の夜の秤
 ひとひとりこころにありて除夜を過ぐ
【2010.04.07 Wednesday 08:46】 author : 杉篁庵主人
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千体の雛見し妻の声弾む


妻は勝浦。電話の声が弾んでいる。
早くも三月である。
昨年2009.12.27 よりブログタイトルを俳句にしていた。
それをまとめてみた。少しずつでもたまっていくものだと思う。
暮れと昨日とまるで同じ後悔をしていた。


09十二月
立ち上る煙一筋山眠る
数へ日の車内に置かる荷を跨ぐ
散歩する犬もせわしき暮れの町
年の瀬や買ひ来るものを数へあひ
為すことの多く残りて歳暮れぬ

2010年
一月の句
初詣開始の太鼓腹に聞き
年始状裏返しては頷けり
梅薫る三日の朝のしじまかな
初景色江戸の面影偲びつつ
イタリアをリタイアと読む歌留多かな
小寒や陽の薄らげる白き道
街にいづせめての土産切山椒
盆梅や香の満つ部屋の薄明かり
独り出で煙草吸う庭冬銀河
肩すくむ成人の日の空の色
寒柝の遠くなりゆき犬眠る
小米花咲き初む空に雲流る
部屋の朝白き盆梅咲き満ちて
万両の赤き実なべて啄める
善哉の煮ゆる香ほのか小正月
初閻魔いづれが罪と問ひかねて
冬土用入るやしじまにほの明くる
柚子煮詰む厨に薫る冬日影
水光るいざ鎌倉へ四温晴
福寿草植う大寒の暖かさ
久女の忌夕張月の雲に反る
来ぬ人を待つかに咲けり白梅花
老ひし木に蕾も花も百花魁
春を呼ぶ温き風ある川辺かな
朧なる空に月ある草城忌
晦日節貧のなづみて貧去らず

二月の句
如月の細き雨降る雨に濡る
淡雪の消ゆる間僅(はつ)か花の上
節分や消ゆるにはやき町の雪
立春の風の冷たさ美しく
春浅し羽根艶やかに目白飛ぶ
目白鳴く南天植えし春の午後
霜柱倒すや光る春の色
冴え返る街に珈琲の香流る
鴬の声の聞きたき朝(あした)なり
村里は初音未だし春時雨
春節や日の光れるを寿げり
病院を出づれば雨ぞ梅寒し
たらの芽の天麩羅熱し妻の膳
片隅に淡雪かぶる蕗の薹(とう)
晴るる日の空に張り出す初桜
蕗の薹(とう)春の息吹のほろ苦く
別れ来て春半月の空に酔ふ
二の午や祝詞にのりて香の流る
春時雨鳥の籠れる木陰かな
なすことの多きを残し二月尽


三月の句をと思い、三月の異名を探ったら
弥生〔彌生〕をはじめとして、
建辰月(けんしんげつ) 季春(きしゅん) 早花咲月(さはなさきづき) 早花月(さはなつき) 花咲月(はなさきづき) 花津月(はなつづき) 花見月(はなみづき) 春惜月(はるおしみづき) 夬月(かいげつ) 佳月(かげつ) 嘉月(かげつ) 花月(かげつ) 華節(かせつ)  花飛(かひ) 花老(かろう) 禊月(けつげつ) 穀雨( こくう) 姑洗(こせん) 五陽(ごよう) 載陽(さいよう) 桜月(さくらづき) 蚕月(さんげつ) 染色月(しめいろづき) 雛月(ひいなつき) 修禊(しゅうけい) 修病(しゅうへい) 宿月(しゅくげつ) 春抄(しゅんしょう) 春章(しゅんしょう) 称月(しょうげつ) 清明(せいめい) 竹秋(ちくしゅう) 殿春(でんしゅん) 桃月(とうげつ) 桃浪(とうろう) 桃緑(とうろく) 祓月 (はらえづき) 晩春(ばんしゅん) 病月(びょうげつ) 杪春(びょうしゅん) 暮春(ぼしゅん) 暮陽(ぼよう) 暮律(ぼりつ) 末春(まつしゅん) 末垂(まつすい) 夢見月(ゆめみづき)
とある。

 朧月早花咲く月雛の月

【2010.03.01 Monday 12:55】 author : 杉篁庵主人
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節分や消ゆるにはやき町の雪


今日は節分。
 節分や消ゆるにはやき町の雪
これは盗作である。
久保田万太郎に
 節分やつもるにはやき町の雪 
という句がある。それをまねたのである。

その万太郎に
 初午や煮しめてうまき焼豆腐
という句がある。これは昭和ニ十七年の作。しかし、昭和四年作の小沢碧童の句に、
 初午や煮つめてうまき焼豆腐
という句があり、しばしば類似・類想句として話題になる。
「引っ込めるべきではないか」という意見に、万太郎は、焼豆腐は「煮つめて」ではなく、「煮しめて」が正しいと平然としていたという話が伝わっている。碧童の先行句より上という自負があったのであろう。

なお、2月最初の午の日を初午とすると今年は2月1日(月)で立春前、初午を立春後最初の午の日とするならば13日(土) となる。

【2010.02.03 Wednesday 10:06】 author : 杉篁庵主人
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部屋の朝白き盆梅咲き満ちて


 盆梅のふふみて暮れし師走かな
 盆梅や香りほのかに改まる
と詠んでいた盆梅。この間に蕾は次々に開いた。

 大服や反り返りたる梅花芯
 袖長き晴れ着畳めり梅開く
と詠んでいるうちに全ての蕾が開いた。香りも満ちる。これからは散るばかりとなろう。

 一片を梅花粧にぞ見立てける
というような娘がいればと想像してみるが、これは器の話ばかりしている。

 有明の細き月あり冬深く
 寒風の果てにすがしき空の色
今日の空はいかにも冬の空で澄んだ青空である。
【2010.01.13 Wednesday 14:53】 author : 杉篁庵主人
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朝日を浴びて

湯河原に梅がまだあるかと思って来て見たが、全く終わっていた。早咲きの桜や桃が見られる。
昨夜の満月を見ながらも趣あったが、日の出の露天風呂も気持ち良い。


朝の陽を浴びて湯を浴ぶ春の山


友集い湯浴び語らふ花の里


探梅の果ての湯の街暮れにけり




【2009.03.12 Thursday 07:16】 author : 杉篁庵主人
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「春の句」十句






昨日今日と随分と暖かく、春の最中になった感がある。



  春の句・十句


 雨煙る中に鴬鳴く古刹


 春雨に濡れて行きたや祇園町


 さらぬだに朧なる宵春の雪


 人待ちの手に消ゆ春の宵の雪


 黒髪の乱るる雛のいとほしく


 黒髪に波の音聞く雛の町


 うらうらと春の潮の音春の山


 菜の花や鉄路の続くどこまでも


 再会に心躍れる春の宴


 みすゞ忌のしめり一輪木瓜咲きぬ 3/10


【2009.03.10 Tuesday 18:39】 author : 杉篁庵主人
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勝浦のひな祭り

勝浦という地は徳島県と和歌山県と千葉県にある。
徳島の勝浦町との交流の中からそこで行なわれるビッグひな祭りの人形を譲り受けて始まった千葉勝浦のビッグひな祭りも今年は9回目になるという。
年々盛んになって、街中に雛人形が溢れる。
総野小学校の会場では寿司と白酒が振る舞われ、落ち着いて雛人形が眺められる。河津桜の苗木もだいぶ育って見頃になっていた。


白酒に河津桜を浮べ見む

街中に雛の溢るる祭かな


店毎に雛を飾れる海の町


街抜けて波の音聞く桃の節


黒髪に式部偲べる雛かな


黒髪の乱るる今朝の女雛かな


おちこちにいはれを語る雛の客


古を偲ぶ雛のくすみ顔




【2009.03.02 Monday 12:52】 author : 杉篁庵主人
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駄句駄句と

ここに句を記す時はパソコンのない場所に居て、かろうじて携帯の繋がる所に出て送信する状態なので、記事を書く気にはなれない。
それで駄句を記しているのだが、これがまたなかなか上手くならない。


寒雲や鳶の低くに輪を描けり
雲厚く鳶の輪低き寒の空
雲垂れて鳶の輪低し榾の宿


と、かように同じ景をどう詠むのが良いのかさっぱり判らない。共に好く詠めていないということであろう。
己の馬鹿さ加減に呆れながらそれでもぼちぼち句は続けようかと思うので、それを目にする読者には申し訳ないと恥じ入るばかり。老人の戯事、ご容赦のほど。




【2009.01.23 Friday 11:49】 author : 杉篁庵主人
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冷たき雨

枯山の古刹に向かふ道遠し


積上げて炎も高く枯木焚く


柔らかき白灰残し焚き火消ゆ


一人居て夜半の雨聞く冬座敷


枕辺に冬の雨聞く朝ぼらけ


雨煙る枯野に立ちて濡れてをり


【2009.01.22 Thursday 13:27】 author : 杉篁庵主人
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曇天

待ち居れば漏るる雲間の冬陽射


日脚伸ぶ靡く煙の三つ四つ


ショール巻く人の手の白さかな


人一人枯野に立てり昼の月


冬川の光りて遠く人招く


花束を買ひて歩ゆめる冬の道


【2009.01.20 Tuesday 11:02】 author : 杉篁庵主人
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